はじめに
グロインペイン症候群(鼠径部痛症候群)は、運動をする人、特にサッカーやランニング、テニスなど下半身を酷使するスポーツ選手に多く見られる股関節や鼠径部の痛みを伴う疾患です
医学的には「鼠径部痛症候群」とも呼ばれ、慢性的な痛みが特徴です
グロインペイン症候群の特徴
主な特徴
- 痛みの場所:鼠径部、股関節周辺
- 痛みが出現する経緯:激しい運動や繰り返しの動作、急な方向転換
- 症状の持続:初期段階では軽度の痛みが運動時に感じられるが、悪化すると安静時にも痛みがあることがある
症状と原因
症状
- 局所の痛み:鼠径部や股関節周囲に鋭い痛み、または鈍い痛みを感じる
- 動作制限:歩行、走行、階段の上り下り、方向転換時に違和感や痛みを感じます
- 運動後の悪化:特に運動後に症状が強いことがある
- 筋力低下:痛みによる股関節の使用制限で筋力が低下することもある
主な原因
- 過剰使用(オーバーユース)
行われる動作が鼠径部や股関節に負担がかかり、筋肉や腱、靭帯が炎症を起こす - 筋肉のアンバランス
腹筋、内転筋(内ももの筋肉)などの筋肉バランスが崩れると、局所的に過剰なストレスがかかります。 - 関節の問題
鼠蹊部や恥骨部の炎症、関節唇損傷(関節の軟骨の損傷)が痛みの原因となることがある - 運動量の増加
急激な負荷増加や激しいトレーニングが痛みを伴うことも
診断方法
グロインペイン症候群の診断には、以下のような方法が用いられます
1. 問診
- 痛みの場所、発症時期、運動歴を詳しく聞く
- 痛みがどの動作で強くなるかを確認する
2. 身体検査
- 患者部の圧痛(押したときの痛み)の存在を確認
- 股関節の可動域テストや筋力テストを実施
3. 画像診断
- X線撮影:骨や関節の状態を確認
- MRI: 筋肉や腱、軟部組織の詳細を徹底的に調べるために有効
- 超音波検査:炎症や血流の異常を観察
治療方法
保存療法(手術を行わない治療)
- 安静
痛みがひどい場合は、運動を一時中止して負担を軽減 - 物理療法
- ストレッチ:筋肉の柔軟性を向上させる
- 筋力トレーニング:弱い筋肉を強化し、バランスを整える
- アイシング:炎症を抑え、痛みを軽減する
- 薬物療法
- 消炎鎮痛剤(NSAIDs):痛みや炎症を軽減
手術療法
保存療法で改善しない場合や、重度の損傷が見られる場合には手術療法が検討されます
具体的には、関節唇修復や腱の修復手術が行われることがあります
予防とリハビリ
予防のポイント
- 正しいフォームの習得
スポーツの際の無理な姿勢やフォームを改善する - ウォームアップとクールダウン
運動に合わせてストレッチや軽い運動を行い、筋肉を柔軟にこなす - 運動量の調整
無理に負荷を増やさないように計画的にトレーニングを行う
リハビリ
- 段階的な回復プログラム
痛みが改善してきたら、軽い運動から徐々に負荷を増やしていく - 専門家の指導
理学療法士やスポーツドクターの指導を受けることが推奨される
まとめ
グロインペイン症候群は、適切な治療によって多くの場合、回復可能です
早期発見・治療が鍵となるため、鼠径部や股関節に違和感を感じた場合は無理をせず、
専門家に相談しましょう
また、予防を行うことで再発を防ぎ、健康的なスポーツライフを楽しむことができます